壁画1 “THEORIA” では風景画を描き、壁画2 “A Fisherman” では人物画を描いてきました。
ですので、今作の壁画3では静物画を描きたいなと前々からぼんやりと考えていました。
そして静物画について調べていくとその起源は、イタリア・ポンペイの壁画にあるとわかりました。
その壁画はなんと、客人を迎え入れる部屋の壁に描かれるフルーツや魚などの贈り物についての絵が描かれた壁のことを指していました。
今回私は”ブーケ”の経験からこれまで私がたくさんの住民の方々に頂いてきたモノを構成して静物画の壁画を描きましたが、実はそこには美しすぎる因果の裏付けがありました。
また、滞在中にはたくさんの方から様々なお話しを伺います。その中でもこの土地に関わる歴史の話は大変興味深いテーマが多くありました。
そのようにして伺った、この地方にも多く存在した潜伏キリシタンの歴史や、西南戦争で負けた薩摩軍が雄勝石を掘削する石工として働いていたという史実についても、モチーフに絡めて描かせていただきました。
例えば、薩摩郡はさつまいも、キリシタンについては雄勝町にも深く関係する支倉常長の衣装の刺繍のススキを抜粋し絵の中に登場させました。
という具合に、他にもいくつかのモチーフに意味を絡めながら描いていますので、ぜひ探してみてください。
この壁画はプロジェクト2期目に制作しましたが、昨年からの1年間で感じたことがあります。
それは「此処での制作が纏う時間は、長い芸術史、ひいては人類史の時間軸と共にある」そんな規模の仕事だということ。
現代的なスピード感覚とは対照的なそれに、私は芸術家として救われているという自負さえあります。
これからも真摯に土地と歴史に向き合いながら、じっくり作品を此処に土着させることに集中し制作を続けていきたいと考えております。
まだまだ始まったばかり、期は黄金色に輝きだした黎明です。
海岸線の美術館
美術館
宮城県石巻市雄勝町にある美術館。東日本大震災後、雄勝町の海岸線を囲うように建設された高さ最大10m/全長約3.5kmの防潮堤に壁画を描くアートプロジェクト。壁によって海の風景を見ることができなくなった海岸線に、地域住民や全国の支援者を巻き込みながら壁画をつくり、新しい風景を生み出すことで、人と防潮堤の新たな関係性を築きます。
日本の誇りである東北の美しい海岸線の風景。再開発などで美しい風景が日々失われている日本で、大きな力に依拠しない、そこに住む我々ひとりひとりが理想だと思える風景を作りつづけていく活動です。
作品
海岸線の美術館のアート作品をArtStickerで掲載中。海岸線の美術館のアート作品のサイズ、素材、作品コンセプトや、個展や経歴などのアーティスト情報も公開しています。
プロフィール
バイオグラフィー
海岸線の美術館は、2019年にメンバーが全国各地から雄勝を訪れたことから、計画がスタートしました。雄勝を訪れてまず最初に圧倒されたのが、当時建設中だった巨大な防潮堤、海の見えない風景、どこまでも続く灰色の大きな壁。見上げると首が痛くなるほどの高さ最大9.7mの壁が、海岸沿い3.5㎞にも渡って続いていました。震災後建設がスタートし、2022年に完成しました。この防潮堤を、外から人を呼ぶ存在に変えられないかという想いが募っていきました。そこで、防潮堤の壁面にアーティストが雄勝の新しい風景を描き続けていく事業プランを考え、地域の住民や行政にそのアイデアを提案したところ、「県外からも人が呼べるような場所になるかもしれない」というお声を頂き、実現に向けて動き出すことになりました。
リンク
タイムライン
海辺の町に対して、雄勝に訪れる前まではざっくりと穏やかでスローな印象を抱いていました。 実際に通い続けると、漁師さんの仕事ぶりや住民の方の日々の営為や話ぶりや仕草、歴史を遡ってみたいという欲望を掻き立てる土地のミステリアスさ、 そして太古にまで想像の幅を拡張させられてしまう圧倒的な海や山や空の大自然があると知りました。前提イメージを超越してくるそれらのワイルドさとスケールに飲み込まれ、雄勝にくると必 ず「島国に生きている」という実感を反芻します。雄勝の各浜の風景をミックスした時代性を特定させないワイドな一枚の絵の中には、左から、夕→昼→朝→夜と時間軸も混在させており、これは北上川沿いにある大川小学校遺構に残されている児童壁画の構成を参照させていただきました。また、雄勝にはリアスの地形からなる独特な移動体験がありました。 各地区・浜間を移動するには、海側→山→海側というルートを通るのですが、その際に山の中の木々の隙間から見える対岸や水平線の見え方に魅力を感じ、”抜けの窓”をいくつも設ける構成をベースにしました。この壁画はこれから毎日、晴れの日も雨の日も、移り変わる四季や、対岸の山や一秒ごとに表情を変える空、走る車や生活する人と共に風景を作っていくでしょう。 そして人がここにいる限り、ここでその光景を眺めて「観て想う」ことは続けられていくのだと信じているし、そこにある存在と状況のすべてとともに成立する作品なのだと、壁画の制作中にずっと考えていました。そして、この作品のタイトルを「テオリア」と決めました。 テオリアは「観想」という意味のギリシア語です。スペルを分解するとTHE / O(Ogatsu) / RIA(rias) と「雄勝の岸辺」と読むこともできます。いつまでも、観る人たちがこの壁画を含む雄勝の雄大な風景を前に、視野の先にある没入と想像の時間を過ごしていてくれたらな、と願っています。






