鳥
制作年: 2016
素材・技法: 和紙, 墨, その他
サイズ: 95.5 × 95.5 cm
エディション: 1点物、ユニーク
サイン:未設定

About the Work
- 制作年
- 2016
- 素材・技法
- 和紙, 墨, その他
- サイズ
- 95.5 × 95.5 cm
- エディション
- 1点物、ユニーク
- サイン
- 未設定
- クレジット
- photo by KABO
- 額装
- なし
- 作品証明書
- 未設定
- カテゴリー
- 書道
- スタイル
- 日本画・和
Work Details
『鳥』2016
新潟に着く。
晴れて、風が吹いている。
新潟の日差しは強くて、濃く深い影をつくる。街にもひとにも、そんな影を感じるときがあって、だから何度も何度もまた戻ってきたいと思うのかもしれない。
*
二〇一一年三月十一日、わたしは東京にいた。その日の朝、窓越しにたくさんの鳥たちの声を聞いた。ただ、わたしはその鳥たちの姿を実際には見なかった。
時間が過ぎ去るなか、記憶の風化は確実に進む。けれど、わたしの耳の奥には、あの朝、けたたましく叫ぶように聞こえた鳥たちの声がいまだに残っている。
きっと地震と直接は関係のない些細なことだ。それをどうして繰り返し思い出すのか、自分でもよくわからない。わからないからこそ、まだ寒さが残るあの日の朝のことを改めて何度も思う。
姿を見なかった鳥たちの声を思い出しながら「鳥」の字を書けば、何かに近づけるかもしれないと思い、何回も試してみた。
四年前、頭の中に跡を残した声が、「鳥」の字のかたちになってすこしずつ目の前の紙の上に出て来る。
漢字一文字を書く「一字書」は、その字が持つ音、意味、象形からの成り立ちといった漢字が複数持つ要素のどれかひとつだけに焦点を当てて書かれたものではない。書はその意味するところを曖昧なままに、書き手によって形づくられ、提示される。その「一字書」をどう読むか、どう見るかは、それを見るひとにゆだねられている。
白い紙に白い顔料で書いた一字書の「鳥」は、光の具合で物理的にその見え方の印象を変える。見るひとが、場所や時間をはじめ、様々な要因のなかで、それをどう捉え、そこに何を見るかは、それぞれに異なる。ただわたしには、「鳥」が、あの朝の鳥の声のように書けたのではないかと思えるときがあった。それは、忘れてしまうことと思い出すことを行きつ戻りつするはざまを見ているようだった。
四年前の今日も、東京は、晴れて、空気は冷えていた気がする。午後の待ち合わせのために出かけようと、支度をしている間、窓の外では、鳥の声が、一羽ではなく、けたたましいほどの声が聞こえた気がした。そのことが、どうしてかずっと頭にこびりついて離れずにいた。あの日の朝の、聞いたかもしれない鳥の声を、何の役にも立ちそうにない、気のせいかもしれないことを、それでも、なぜか書いておかなければと思って、四年が過ぎた。
書き始めてみれば、鳥の声は、去年の春、南相馬の海で見た鳥たちの記憶を連れてきた。鳥たちは、群れをなし、波打つように飛び立っては戻り、また飛び立っては戻り、そしてやがていなくなった。
書いているうちに、日は暮れ始め、窓の外では「どこに行ってしまったの」と幼い声が誰かを探している。
撮影・編集:播本 和宜
Exhibition Information
- 過去の展示
- ミヤケマイ×華雪 「ことばのかたち かたちのことば」2021.12.20 - 2022.01.29華雪 個展「ながれる」2020.06.05 - 07.05






























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