Levitation #4 浮遊
Soyblanc

現代美術作家
現代美術作家
私はオーストラリアで生まれ、日本国籍のまま11年間をその地で過ごしました。どちらの国にも完全には属さないという感覚が、私の制作の出発点です。
《Levitation Whale》シリーズでは、キャンバスにアクリル絵の具と漆を縦縞状に交互に塗り重ねます。抽象表現主義的な身体の痕跡を残すアクリルの筆致と、静かに光をたたえる漆の平滑面。感覚で幅を決め、作品ごとに揺らぐこの縞は、葬儀に用いられる鯨幕を参照しています。鯨の背と腹の色にちなむ黒白の幕は、かつて婚礼にも用いられたとされますが、戦後には弔事の象徴となりました。千利休の時代から美の色とされてきた黒が、西洋的な喪の色へと書き換えられたのです。私はその反転に戦争と歴史の業を感じ、漆の黒を塗り重ねることで、書き換えられた黒の美しさを取り戻そうとしています。
その縞を、鯨が横断していきます。鯨は国境を持たない生き物ですが、その意味は国によって正反対になります。日本の沿岸では海の彼方から富をもたらす恵比寿として祀られ、オーストラリアでは保護の象徴として、両国が国際司法裁判所で争うほどの対立を生みました。両方に根を持つ私は、どちらの側にも立てず、両義的な感情に苛まれてきました。それでも鯨は、恵みをもたらす存在です。現代の市場で、流れを動かす大口投資家が「クジラ」と呼ばれるように。
素材の選択も、境界を往復してきた歴史に連なっています。ヨーロッパ向けに螺鈿と蒔絵で作られた南蛮漆器。ジャポニスムを経てクリムトへと渡った日本の金の美学。私はこれらの技法を独学で学び、工芸の外側から組み替えています。鯨の周囲に散る丸い螺鈿は、オーストラリアでアボリジニの人々から学んだ同心円の記号を、海の素材で翻訳したものです。
国家間の分断が深まり、技術が人間と機械の境界を揺るがす今、自分がどこに属するのかという問いは、誰にとっても切実なものになっています。螺鈿と焼き箔の輝きは見る角度によって変わり、作品は鑑賞者が自ら動くことで初めて完成します。どこにも属さないことは欠落ではなく、重力から自由になることです。境界を越えていくことの美しさを、私はこの浮遊する鯨に託しています。
Soyblanc
1987 年 オーストラリア生まれ
■ 学歴
2007 Geelong Grammar School (オーストラリア、メルボルン)ビジュアルアート専攻
2023 ARTabi アートアワード オーディエンス賞
2021 SHINWA ART AUCTION 100名入選
■ 個展
2026 個展、Nitaly ギャラリースペース([都市])
2024 個展、Gallery gobangura(京都・五条)
■ 主なグループ展
2024 「Life with Art」、ららぽーと豊洲(東京)
2024 「Art Vacation」、伊勢丹 立川店(東京)
2023 グループ展、Sansiao Gallery(香港)
2023 グループ展、Sansiao Gallery(東京)
2023 グループ展、辰野美術館(長野)
2023 「Bits & Pieces」、Gallery Drella(東京)(入選)
2022 東京ミッドタウン 100人展(東京)(入選)
2022 [展覧会名]、Inspiration & Cult Gallery(東京・渋谷)
2022 「アンプラグド」、TRiCERA Museum(東京)
2022 「Black & White」、TRiCERA Museum(東京)
■ アートフェア
2023 Independent Tokyo(東京)
■ その他の展示
2024 阪神阪急ホールディングス ワーカーズリフレッシュルーム(大阪)