川島桃香

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CV

川島桃香

アーティスト

川島桃香の制作は、「喪失が生じた後においても、実体のない他者を愛し続けることは可能か」という問いから始まる。

彼女の作品において「君」と呼ばれる存在は、もう二度と会うことはほとんど叶わない特定の個人に向けた呼称から始まり、徐々に喪失された他者全体の象徴として立ち現れる。その不在がどのように私たちの内部に留まり、変容し続けるのだろうか。川島は、記憶という不定形な存在の変貌を、絵画・インスタレーション・詩・テキストを中心とした表現によって表出することを試みる。

ジャック・デリダは『アーカイブの病』において「記憶は保存の過程で本質を失う」という逆説を指摘した。この構造は川島の制作と深く結びついている。「君」を記憶・記録しようとする行為は、同時にその本質を変容させ、あるいは喪失させてしまう可能性を孕んでいる。しかし、この矛盾に向き合い続けること自体を、愛するという営みのひとつとして捉えている。

また、テキスト表現においても「君」と「私」の対話や反芻の有限性を基軸に据えている。自身の言葉を絵画やインスタレーションへと変換することで、言語と非言語のあいだに生じる越境しきれなさを、「翻訳のずれ」として捉える。何度も言語と非言語を行き来することで、翻訳のずれが埋まったり、逆に広がったりする。その様が表象したい「君」の不在になるまで繰り返す。

近年は記憶の中の他者を縁取るために、防炎フィルムや防犯フィルムといった半透明〜透明な支持体を選ぶことが多い。これらは生存や防御に関わる素材であり生存を選択する者が手にするものである。作品は光源の位置によって表情を変え、ひとつとして同じ姿を保たない。こうした変化は、生存を選択し続ける限り変容し続ける存在のあり方を想起させる。一方で、防炎素材の上に油彩という可燃物を重ねる技術的な矛盾は、「君」を描き続けることそのものの矛盾を映し出している。

川島は、この逆説を抱えながらも「君」の不在を形にし続けている。形あるものとして留めようとすればするほど、作品は「君」そのものではなくなっていく。しかし、それでもなお、作品において「君」と名付け続けることによって、「君」を代替不可能な存在のことを信じていたいのだ。

経歴

受賞歴
2025 「WIRED CREATIVE HACK AWARD 2025」グランプリ
2024 「Limelight 2024」 Under30部門 グランプリ
2024 「IAG AWARD 2024」 入選
2022 「TURNER AWARD 2022」 未来賞
2022 新県美展(第74回広島県美術展)一般部門 絵画系 入選
2021 「Light Art 21/22」 カタエ企画賞
2021 広島県Web公募美術展 一般部門 映像系 優秀賞
2021 広島県Web公募美術展 一般部門 絵画系 特選
展示歴
2026 Gセレクション「[ ]、ストローク」gallery G(広島)
2026 「ドローイングの歌を聴け2」HONJO FACTORY(大阪)
2026 「恋の画塾 成果発表展」とりでアートギャラリー(茨城)
2025 「月下ノ舟 詩を運ぶものたち」画廊香月(東京)
2025 「こどうとことばとば」樺島ストアハウス(長崎)、ライブハウスPEACE(福岡)
2025 「初恋メモリアル」根津カレーlucky(東京)
2025 「恋の画塾 成果発表展(夏)」AVA(東京)
2025 「池袋回遊派美術展」自由学園明日館講堂(東京)
2024 「IAG AWARD 2024」東京芸術劇場 ギャラリー1&2(東京)
2024 「SICF25」スパイラルホール(東京)
2024 「空間彩添」aL Base(東京)
2023 「A/B」廃墟ギャラリー(広島)
2023 「TURNER AWARD 2022 作品展」TURNER GALLERY(東京)、バックス画材ギャラリー(京都)
2022 「GEISAI #21」東京ビッグサイト(東京)
2022 「サッカーボールアート展」そごう広島(広島)
2022 「新県美展(第74回広島県美術展)」広島県立美術館(広島)
2021 「広島国際映画祭」NTTクレドホール(広島)
個展歴
2025 「花葬 / 人間に愛されなければ、今もまだ生きていただろうか」OM SYSTEM PLAZA Creative Wall・OM SYSTEM PLAZA Creative Vision(東京)
2024 紫尾アートプロジェクト アーティスト・イン・レジデンス成果発表展「今この瞬間に私が、他でもない私が、ただ生きていることの弁証を君は何ひとつしてくれないけれど、君が生きてきたことの証明を、私たちは今ここで再生することができる。」紫尾神社(鹿児島)
2023 「じゃあ、いくか?ああ、行こう。ふたりは動かない。沈黙。」aL Base(東京)
2023 「肉体はたましいの容れ物にすぎないのだから」安田女子大学 CUBE1(広島)
2022 「わたしは、海に、還った。」タメンタイギャラリー 鶴見町ラボ(広島)
レジデンス
2024 紫尾アートプロジェクト 2024 アーティスト・イン・レジデンス
アートフェア
2025 「Art Fair Beppu 2025」別府国際コンベンションセンター ビーコンプラザ(大分)
アートワーク
2026 Torr × Three Marks of Existence 「split」カバー、ジャケットアート制作
2024 PHOEBE「おさとうあなた」 カバーアート制作
2024 PHOEBE「水葬(lullaby)」 カバー、ジャケットアート、制作
2023 PHOEBE「月食」 カバーアート制作
2022 PHOEBE「blue,blue,blue」 ジャケットデザイン
出版・自主制作
2025 『私は60分後に死ぬ』自主制作・販売
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