造語、静衡(せいこう)。相反する力を受け止め、余白へと解放する均衡を捉えた作品です。細部までご覧いただき、力の流動を感じてください。
櫻井 智

現代美術家
現代美術家
私の制作は、異なるもののあいだに生じる差異と関係を観察し、そこから一時的に成立する「動的均衡(Dynamic Equilibrium)」を捉える試みです。
その基盤にあるのが、私が「三視覚原理(Three Visual Principles)」と呼ぶ制作原理です。
三視覚原理は、Polarity(両極)、Continuum(連続体)、Ma(間)から構成されています。Polarityは異なる二つの極の関係、Continuumはそのあいだに存在する変化や移行、Maは異なる要素が差異を保ちながら関係として成立する場を捉えるための原理です。
三つを切り離して考えるのではなく、相互の関係を通して作品を構成し、捉えています。
制作には、アクリル絵具、油彩、墨、樹脂、岩絵具、金属、植物、蝋、箔、ガラス、粘土など、性質の異なる素材を横断的に用いています。熱、重力、流動、乾燥、酸化、凝固などによって素材が変化していく過程を観察し、介入と選択を重ねます。素材は必ずしも意図した通りに変化するわけではなく、操作と作用が関係するなかで、予測しきれない状態が生まれます。
私が捉える動的均衡とは、異なる要素が互いの差異を解消することなく関係し、一つの状態を一時的に成立させることです。それは静止した均衡ではなく、複数の関係から生まれ、その関係の変化によって別の状態へと移り得るものです。
私にとって創作とは、あらかじめ定めた形態を素材に一方的に与えることではありません。素材と現象に働きかけ、その応答を観察しながら、そこに生じる変化を受け取り、必要に応じてさらに手を加えていく行為です。
作品とは、そうした操作と作用の関係から一時的に生まれた状態を、物質として定着させたものです。
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長野県生まれ、横浜美術短期大学卒業。東京を拠点に活動する現代美術家。
素材や物理的現象の観察を通じ、異なる要素が差異を保ちながら関係し、一つの状態を一時的に成立させる「動的均衡(Dynamic Equilibrium)」を主題に制作を行う。日本の伝統素材からエンカウスティーク、現代素材までを横断的に用い、熱、重力、流動、乾燥、酸化、凝固などによって生じる素材固有の変化を作品に取り込んでいる。
主な個展に、「シュレーディンガーの幕」(2024年、Tokyo International Gallery)、「Y=(0.298912R + 0.586611G + 0.114478*B)」(2022年、Amalgam Art Gallery)などがある。また、「FOCUS Art Fair 2022 in Paris」(カルーゼル・デュ・ルーヴル、フランス)、「アートフェア東京2021」(東京国際フォーラム)、「PANORAMA」(2024年、Gallery Assistant at Atelier Natália Gromicho)など、国内外での展示や国際的なアートフェアに参加。
相田みつを美術館(東京)、韓国美術館(ソウル)、CICA Museumでの展示のほか、神社仏閣や国内外の企業・公共施設に作品収蔵。
近年は、自身の制作原理「三視覚原理(Three Visual Principles)」を基盤に、差異と関係、そこから生起する動的均衡のあり方を探求している。