LAGで開催の木下令子 “Reframing”にて展示された絵画作品です。
木下はこれまで、素材に刻まれた皺や折り目に着目し、それらに絵具を吹き付ける手法や、日焼け・感光といった経年変化をも取り込むことで、不可逆な変化や痕跡を可視化する独自の絵画表現を展開してきました。素材の選択そのものが創作の出発点であり、そこに潜む「像」を見出し、その微かな兆しに作家としての行為を重ねていく姿勢が、木下の絵画を特徴づけています。
—Artist Statement—
紙や布を選ぶその時点ですでに全体の像は立ち上がっており、私の絵づくりはそこからはじまります。 シワや折り目、ひだ、日焼け、感光といった、まっさらではない状態には、絵筆を取る前からすでにイメージが存在しているのです。
霧状の絵具を吹きかける手法は、窓辺に差し込む太陽光を模したものであり、暗室での写真現像の工程とも結びつきます。 現像前のフィルムや印画紙の上に存在する、肉眼では見えないけれど確かにある像は「潜像」と呼ばれ、光化学反応を終えて見えてくるもので、物質が描く像とも表現されます。
机に広げた布や紙の上にも、そして身体の中にも潜像は存在している。私の場合、光ではなく絵具を使って像の現れを待つこと、それが制作にとってもっとも重要な時間です。
木下 令子



