テラスアート湘南アワード 受賞作品です。
2024年10月4日(金)~12月25日(水)テラスモール湘南にて展示致します。
《作品コンセプト》
あるインタビューをしていた。「ファミレスは別れ話をするところだよね」。この言葉から出発して、〈ファミレス〉〈郊外〉という概念を捉えなおしてみようと思う。営業終了後も発光する、虚構のファミレスの看板と、「ファミリー」の集う装置としてのシート・テーブルと。
ファミリーレストランは1970年代に、アメリカ的価値観と共に日本へ輸入されてきた。ファミレスは、高度経済成長下における日本の〈家族〉概念のイマジナリーな象徴でもある。地方都市のパッケージ化された風景にも、ファミレスは潜んでいる。そこでひとは「イマジナリーな親密さ」を養うファミレスに集う。ファミレスを求める人は、居場所がないのである。この居場所のなさは、孤独ではなく、気軽さである。気軽で、余分だったからこそ、「ファミレスでいいじゃん」というのだった。
……湘南、といえば。その言葉のあとに続く、奇妙に乾いた悲しみについて。湘南という地域が育んできた家族像には、単に気軽な「サーフィン」や「郊外暮らし」というパッケージ化された生活があるのみならず、日本の中流階級における「豊かさ」の抱える行き詰まり感をも暗示している。
ときは2020年代。新型コロナウイルスのパンデミックにより、「24時間営業」は短縮され、「深夜」は行き場を失った。イマジナリーな親密さを培ってきたその電光色は潰えかけている。
本作において、夜間に点灯する看板は、新型コロナウイルスによるパンデミック以降に追放された「深夜」の象徴である。同時に、〈ファミリー〉の記号性だけが吊り下げられ、パッケージ化され、誘導灯となってきた状況を示している。テラスモール湘南という大型複合ショッピング施設において、家族像を支えるシート/テーブルを、無理矢理に芸術的な台座の上に引きずりあげるのである。



