空間松林図シリーズの3作品目になります。
《空間松林図》シリーズ
松のシルエットを記号的に描き、それをコピー&ペーストで反復することで構成されている。これは、現代人が日常的に行うデジタル操作でありながら、尾形光琳の《燕子花図》などに見られる伝統的なパターン表現とも通じる構造を持っている。さらに、故郷・浜松市の松林という身近な風景がモチーフ選択に影響を与えており、「松」というモチーフを通じて個人的記憶と日本文化の普遍性を接続する。
鈴木康太
コンテンポラリーアーティスト
コンテンポラリーアーティスト
1993年静岡県生まれ。
初めにパソコンで絵を描き、デジタルデータの画像を一度作成する。
その際、ある画像データを一度テキストデータに変換し、内容を書き換えることで作成した「バグ」をモチーフの一部として用いている。
「バグ」は自身の意図とは無関係な情報の破損として表出し、画面に偶然性をもたらす。作成したデジタルデータをもとに現実の絵画に移行していく。
素材には、箔や岩絵具を用いることで無機質な画像データに物質感を持たせている。
この移行プロセスは、データの世界と現実世界を行き来するようなものだ。スマートフォンやコンピューターで長時間作業した後、ふと画面から視界をずらすと現実に引き戻されるような感覚に似ている。
1993年、静岡県浜松市生まれ。現代における「デジタルと物質」「偶然と操作性」「伝統と現代」の交差をテーマに制作を行う。作品は、パソコンやスマートフォン上での作業から始まり、テキスト変換によってデータの破損を意図的に発生させることで「バグ」を生成し、視覚的モチーフとして取り入れている。
この「バグ」は、コンピュータによる情報の破損であると同時に、自身の意図を超えて生まれる偶然性の象徴である。.jpegファイルをテキストに変換し書き換えることで、再構築不可能なエラー画像を多数生成し、それらを作品の基礎素材として用いている。
また、こうして生成されたデジタル画像は、絵具や箔を用いた物質的な作品へと変換される。岩絵具の粒子感、箔の反射光といった素材を使うことで、データに触感的なリアリティと深みを与え、バグという非物質的な現象を現実世界へと引き戻す。画面上のデータは、プリントアウトされるだけでなく、筆や刷毛で再構成されることで、手の痕跡を持ったアートへと昇華する。
《空間松林図》シリーズでは、松のシルエットを記号的に描き、それをコピー&ペーストで反復することで構成されている。これは、現代人が日常的に行うデジタル操作でありながら、尾形光琳の《燕子花図》などに見られる伝統的なパターン表現とも通じる構造を持っている。さらに、故郷・浜松市の松林という身近な風景がモチーフ選択に影響を与えており、「松」というモチーフを通じて個人的記憶と日本文化の普遍性を接続する。
続く《EMERGE》シリーズでは、2次元から3次元への移行がテーマとなる。デジタル上のフラットな画面に構成されたイメージが、物質として立体化され、壁から「浮かび上がる」ような構成をとる。これは、バーチャルな情報空間と現実との境界を問い直す試みであり、長時間スクリーンに向かって作業したあとに、ふと視線を外して現実の空間に戻ったときの「感覚の切り替え」を視覚的に再現するものでもある。
日本の伝統とアジア的価値観へ意識を向け、明治以降に輸入された「美術」という西洋的概念以前の、アニミズムや風土に根ざした造形感覚への関心を持つ。単に伝統に回帰するのではなく、現代のデジタル技術と意識下で交錯させることで、新たな東アジア美術の可能性を模索している。