作品「Pink nose XI」を公開しました。
身近な物がもつ用途や動作の記憶を手がかりに、鉄、工業製品、布などを組み合わせた立体作品です。見慣れた形でありながら、その役割から少し離れた物として空間に存在します。
彫刻と家具のあいだに立ち現れる、ただそこに在り続ける物、「STILLTHING」として制作した作品です。
細井えみか

彫刻家
彫刻家
1993年生まれ。2018年、武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻彫刻コース修了。ボルトや取手金具などの既製品と、ファブリック、鉄、光などを組み合わせ、彫刻と什器の境界を行き来する作品を制作している。身近な物や空間との関係を捉え直し、日常生活における認識の強度を確かめる行為として制作を行う。こうした実践を「STILLTHING」と名付け、既存の彫刻や家具の枠組みにとどまらない、新たなジャンルとして展開している。
主な個展に、2026年「STILLTHING」(Esther Okada Art Gallery)、2025年「Yellow tower」(照恩寺)。主なグループ展に、2025年「象牙の塔からの不条理主義者」(ビームス ジャパン、伊勢丹新宿店)など。2023年、TBSドラマ『18/40〜ふたりなら夢も恋も〜』に作品協力。同年、「sanwacompany Art Award / Art in the House 2023」入選。
深く腰掛けたソファーの手触り、窓から見える家々のエッジの効いた屋根、道端で見上
げた陸橋の接合部。気にも留めない些細な日常風景は、いつの間にか記憶の中に積み重なって、大きな安心感に繋がっていく。私にとって物事を「知っている」状態は、自らの精神的支柱となり安寧を生み出す基盤である。けれど頭の中に漠然と存在している記憶やイメージは、身体の器官を通して仕入れた情報を、自分自身で無意識に取捨選択した結果に過ぎない。
私の制作は、見たことのあるもの、触ったことのあるもの、 あるいは肌で感じたことの
ある気配など、五感を通した情報により「知っている」と認識していることが、どれほど真実味を帯びたものかを確かめる行為である。安心の出処を探すため、日常生活にひっそりと存在している要素を掻い摘んでは、「これは何だったか」の記憶を辿る。
スティルシング:そこに在り続けること自体が状態である物。