Metamorphosis
Garden_AR
銀座エリア最大の商業施設「GINZA SIX」吹き抜けに浮かぶ 名和晃平によるインスタレーション
《Metamorphosis
Garden(変容の庭)》を舞台に繰り広げられる、振付家ダミアン・ジャレとの共作によるARパフォーマンス。
20年ほど前、私が京都市立芸術大学の大学院生だった頃、小さなアパートに初めてインターネットを繋げた時に、情報化時代の黎明期を象徴するような彫刻を遺したいという想いから、全く新しい考え方の彫刻として、「PixCell」というコンセプト/フォーマットを生み出しました。それは、ネット上にデジタルイメージ(Pixel)として漂うオブジェクトを実際に取り寄せ、PixCell(映像の細胞)に置き換えていく、という非常にシンプルで手間のかかるアナログ的なやり方でした。続きを読む
ちょうどその頃、携帯電話やインターネットが一般に普及し始め、写真はフィルムを使ったものからデジタルカメラへの移行が始まり、写真や音楽はコンピュータ内に保存されていくというアイデアが試されている状況でした。今思えば、PixCellは電子メディアのプラットフォーム上で、社会のあらゆるものが情報化の波に飲まれていくことに対する、アンチテーゼでもあったのかも知れません。
その後、Appleのスティーブ・ジョブズ氏がiPhoneを発表し、人々が日々の生活の中で見たもの、考えたことがそのまま情報化され、リアリティをもって繋がり合う時代になりました。今では世界中の人々が持つ携帯電話やデジタルカメラ、街中に設置された監視カメラ、人工衛星や火星の探査機など、あらゆる人・場所からアップロードされる膨大な視覚情報は、増殖し続ける何億ものカメラのレンズを通して得られたものです。
PixCellはオブジェクトを無数の透明の球体(レンズ)で覆うことにより、現実に対して光学的なエフェクトをかけ、その表皮のテクスチャや色を「映像の細胞」へと置き換えます。今回は、このエフェクトをiPhoneのカメラを通し、LiDARによって空間のスケールや凹凸が認識されたリアルタイムの映像に対して行います。つまり、目の前にあるオブジェクトや部屋の内部、人物などがPixCell化の対象になるというもので、今までの彫刻の概念をさらに拡張するものだと考えています。
名和晃平